文学フリマ札幌10

文学フリマ札幌10に出店します。
前回同様、小説家を目指す僕と、日本語学が専門の研究者の先輩、そしてフランス文学が専門で現在フランスに留学中(博士課程)の友人の三人で冊子を作りました。
このページでは冊子冒頭の「はじめに」を特別公開!
冊子の全体像がわかっていただけると思います。
 
はじめに
札幌の皆様、こんにちは。『GO TO LITERATURE 3』をお手に取っていただき、ありがとうございます。
この冊子は文学フリマ札幌10へ出店するために、小説の創作や言語・文学の研究を行っている3名がそれぞれ文章を執筆し、一冊にまとめたものです。文学フリマには今回で3回目の出展となります。
執筆者は、神奈川で会社員をしながら小説家を目指している僕、横尾。私の大学院時代の先輩で、長野で教職に就かれている言語学者のめんま氏。そして私の高校時代の友人で、現在フランスに留学(博士課程)して詩人マラルメを研究している、うし氏の3人です。お分かりのように、3人の住まいはまったく別々。しかもそれでいて、まったく縁のない札幌に来てしまいました。
といっても一応理由があって、これまで東京の回に出展してきたのですが、まあとにかく会場は広いわ人は多いわで、興味を持ってくれたお客さんとも、また出展者同士とも、なかなかコミュニケーションが取れなかったのです。もう少し小さい会場ならこれが改善できるのではないかと考え、今回はるばる札幌までやって来ました(というちゃんとした理由と同時に、札幌で美味しいものを食べようという目論見もあります)。
なにはともあれ、冊子の説明に入りましょう。今回は「食」というテーマを設定して、それぞれ自由に文章を書いてきました。小説1編、エッセイ1編、評論・研究2編。他に「食」との関連性はありませんが、近年利用者の多いAudibleなどの聴く読書について、3人で話し合った座談会を収録しています。
横尾の短編は、隣に住む迷惑なおばあさんとの近隣トラブルを、主人公たちが明るく痛快にクリアしていく作品です。だんだん明らかになる語り手によって、おばあさんの内面にも迫れるよう工夫をこらしました。同じく横尾のエッセイは、崎陽軒のシュウマイ弁当を軸に、最近の思いや考えを書きました。本当はもう一編小説をと思ったのですが、今書きたいのはこっちだったので、その心の声に従った次第です。
うし氏の評論は、市井の人々の身近な「食」が詩に持ち込まれることで、作品に笑いが生まれることを明らかにした一編。フランス詩になじみがなくてもわかる、丁寧な考証も読みどころの一つです。
めんま氏は、作品を文字通り食べて味わうことができる主人公が登場する『“文学少女”シリーズ』を題材に、文中の場所によって異なる比喩の効果について述べます。言葉のスペシャリストならではの、豊富な知識に裏打ちされた視点に注目です。
遠く離れた札幌の地で、我々の表現と思考が皆様の感性に何かを訴え、考えるヒントになれば幸いです。
2025年8月24日
横尾圭祐